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【IPO労務で注意すべきポイント】コンプライアンス違反(パワハラ、ダイバーシティ)

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2021-04-22

企業が上場するためには「上場企業としての適格性」が厳しく問われる証券取引所の審査をクリアする必要があります。

IPO(Initial Public Offering:新規株式公開)を目指す企業に必要な労務管理体制について、社会保険労務士としてベンチャー企業のIPO労務コンプライアンス対応・企業の海外進出労務体制構築等、国内・海外両面から幅広く人事労務コンサルティングを行う寺島戦略社会保険労務士事務所 所長 寺島 有紀 先生にお話を伺いました。

全4回に渡りお送りします。

寺島先生プロフィール
寺島先生プロフィール

    IPO労務で注意すべきポイント④ コンプライアンス違反がないか

    コンプライアンス順守
    コンプライアンス順守

    寺島先生:コンプライアンス遵守についてですが、労働法とひとくくりにいっても、実に多くの法律があります。労働基準法という企業の労務のベースとなる法律の他にも、関係する法律は多岐にわたるので、これが労務がややこしいゆえんです。

    安全衛生管理体制がきちんと整っているか

    50人以上の安全衛生管理体制
    常時雇用する労働者が50人以上の安全衛生管理体制

    寺島先生:例えば労働安全衛生法では、企業が適切な安全管理体制を整備するための各種義務規定があります。例えば、ITベンチャー企業に関連するものとしては、産業医や衛生管理者を置いているかとかですね。

    IT業種の場合、多くの場合従業員が50人を超えた時から安全衛生管理体制が必要になってきます。産業医を選任しているかや、衛生委員会を設置し月に1回衛生委員会をしたりなどです。他にも健康診断を労基署に報告したり、ストレスチェックといって従業員の心理的な負荷、つまり精神的に疲労していないかということをチェックする義務があったりします。

    様々なタイプのハラスメントに対し適応しているか

    職場のハラスメントは法律で禁止されています
    職場のハラスメントは法律で禁止

    寺島先生:2020年6月にパワーハラスメント防止のための法律ができたことも話題になりましたが、ハラスメントに関しても上場準備企業はかなりセンシティブに考えてるところが多いです。

    ハラスメントは訴訟等が起きると特に知名度のある企業等の場合、Twitterなどで内容が大きく伝わるので、会社の評判が下がったりと外部に漏れるとダメージが大きいものではあります。

    ハラスメントには色々な種類がありますが職場で起こりやすいセクシュアルハラスメント、パワーハラスメント、マタニティハラスメント、ケアハラスメントは各種法律で軒並み禁止されています。

    会社にはそういうものを全部防止しなければいけない義務があります。

    LGBTQの方々への差別的発言や、「女子がいれてくれたお茶はおいしい」や「男のくせに育児休業とって女々しい」など、そのような固定的な性役割に関しての話もハラスメントに該当します。

    パワーハラスメントのタイプ
    パワハラのタイプと具体例

    寺島先生:また、パワーハラスメントも大きな問題です。肉体的な暴力といったわかりやすいものもありますが、「無能だ」「給料を払う価値がない」といった人格否定の発言や、「なんで?なんで?なんで?」と2時間にわたって理詰めするといった精神的攻撃もパワハラに該当します。業務遂行についての指導は当然行っても問題ありませんが、人格を否定するような発言はしてはなりません。また、パワーハラスメントは上司から部下はもちろんのこと、部下から上司のものも該当します。

    もしパワハラを受けていた方が亡くなったりした場合、会社としてパワーハラスメントを適切に防止していたという義務が果たされていないと判断されると多額の賠償金を請求されることが起こったりします。

    マタニティ・パタニティハラスメントとは
    マタニティ・パタニティハラスメントとは
    ケアハラスメントとは
    ケアハラスメントとは

    寺島先生:後はマタハラ・パタハラというものもあります。育児をしている人に「妊娠すると仕事が楽になっていいね」とか、介護をしている人に「時短ができて羨ましい」などそういう発言も全部禁止されています。

    最近はこのリモートワーク環境下、同じ言葉でも文面上だとすごく厳しく感じるという相談が多くなりました。Zoom等で直接話せばまた受け取り方が異なってくるかとは思いますが、チャットツールなど文面上で部下から「おっしゃっていることが理解できません」などと書かれるときつく感じたりしますよね。もし何か真剣な議論が必要な場合にはZoomに切り替えたりと工夫していくことも大切かなと思います。

    リモートワーク環境下で気を付けたい文字ハラ
    リモートワーク環境下で気を付けたい文字ハラ

    雇用契約の形態があっているかどうか

    寺島先生:偽装請負問題もベンチャー企業によくある問題です。ベンチャー企業は業務委託者を活用することが多いかと考えます。労働者には加入が求められる社会保険にも入らなくて良い上、契約終了がしやすいというのもその理由かと思います。

    業務委託者の偽装請負問題

    業務委託者の偽装請負問題

    名称はフリーランス・業務委託なのに実際は指揮命令をしている、勤怠管理もしているなど、このようになるとそれは業務委託契約というより実態は労働者なのでは、偽装請負状態なのではといったことになってしまいますので、こうした状態が発生しているのであれば、上場準備の時に是正が求められます。

    参考

    ダイバーシティに関連する労働関連法が守られているか

    ダイバーシティに関連する労働関連法
    ダイバーシティに関連する労働関連法

    寺島先生:人種・国籍・性別・年齢・障害・性的指向等、多様性に関しても実は労働法上多くの規制があります。

    外国人就労者であれば在留資格を確認しているか、外国人を雇用する際に必要な雇用届をきちんと提出しているかを確認されます。

    障害者については4月以降、従業員43.5人以上に対し1人以上障害者を雇用しないと障害者雇用納付金と言い、1人当たり5万円を納めることになります。足りていない人数に応じて納付するという制度、障害者雇用という義務があります。

    高年齢者については60歳未満は定年にできません。60歳以上でなければいけないとあり、更に希望者は65歳まで全員再雇用と義務づけられています。

    コンプライアンスについても本当に色々とありますが、こういう法律関係は全般も守っていかなければなりません。

    ラクロー:ハラスメントについてですが、どんな取り組みをしていれば「義務を果たした」ことになるのでしょうか?

    寺島先生:会社として就業規則の中で事業主の方針を周知するということは一つのハラスメント防止策です。つまりうちの会社ではハラスメントはあってはならない、ということを就業規則の中に盛り込んでおくことです。セクハラしていはいけない、パワハラしてはいけないなど事業主の方針を明確化し、また、ハラスメントの相談窓口の設置等も必要です。

    さらに、会社として定期的にハラスメント研修など行っていると、会社はハラスメント防止のための方策を各種講じていたという証にもなります。こうしたハラスメントへの対策を兼ねて、ハラスメント・コンプライアンス研修を定期的に実施しているところは、上場準備企業でも多いです。

    ラクロー:なるほど。ちゃんとやるべきことをやり、就業規則にも載っているかということが大事なんですね。

    寺島先生:懲戒になるなど処分が明記されている必要があります。

    さいごに:勤怠管理ツールの在り方について

    ラクロー:ラクローが一番最初のベータ版を出した頃、実は勤怠管理ツールではなかったんです。勤怠管理ツールは機能が多く作るのは大変だろうと思ったので、最初はログだけバッと取ってきて、それと他の勤怠管理ツール使ってもらおうかと考えていました。ラクローを入れたら一気に過去1年分のPCログ全部取ってきて実態出せますよ、すぐ比較できますよ、みたいな感じを想定していました。

    実際営業もしましたがその時、1年間のログを取ってきたという反響がすごかったんです。なんかこれすごいねって。うち、だめじゃんみたいな声がありました。

    寺島先生:みんな普通は打刻ベースですよね。打刻ベースだから逆に言えばいいところしか見えない。会社からすると都合の悪いものが見えない可能性があります。なので私は良い面も悪い面も全てわかってしまうラクローさんとかを使いたくないという会社も正直あると思います。

    リモートワーク下で起動しっぱなしでPCログを見ると、ものすごいことになっている・・・ということもあると思います。

    ただIPO審査上では御社の方式を好むんですね。つまり打刻はあってもいいけど、打刻とPCログの履歴を照合してくださいという事は各社要請されます。

    労基署の臨検においても、打刻とPCログの履歴の照合をするように指導されることはあります。なので御社のビジネスチャンスってそこにあると思います。ログ管理をもっとこう広めるみたいな。

    ラクロー:そうですね。ラクローはもともと社内ツールとして最初作ったんです。その突き合わせが面倒で嫌だったんです。弊社も裁量労働制を利用してた時にセミナーでお話してたように休日深夜だけ抽出する必要がありました。しかし、1分単位でつけるなんて面倒なこと大多数の人がしないですよね。だとしたら自動で取った方が実用的だと思いました。何もしなくて勤怠管理が終わるなら従業員にとっても非常に楽ですし、突き合わせも簡単にできます。

    寺島先生:PCログ等との照合が必要だよね、ラクローみたいなシステムが必要だよね、ということは皆さん上場準備企業だと一定程度理解されているかと思います。私も貴社のシステムは素晴らしいとは思っていますが、でも実際に導入するお客さんからするとこれまで見えなかったところが見える…という意味でインパクトがとてつもなくあるとも思います。

    ラクロー:後発なので併用から乗り換えはあってもいいかなと思っています。ただ未来のニーズとしては次、会社作るんだったら最初からこうしようっていう。そういう新しい形を作れればいいなと思っています。

    寺島先生:素晴らしいですよね。社労士として見てみるとホワイトな企業なら御社ウエルカムだと思います。

    ラクロー:寺島先生にそういっていただけると勇気が出ます。本日はありがとうございました。


    <前回の記事は以下からお読みください>

    参考:寺島戦略社会保険労務士事務所HP

    ラクローでできること

    • PCログやメールの送信履歴、外部サービスなどの客観的記録をベースに打刻レスを実現
    • 厚生労働省に「打刻レス」の適法性を確認済み
    • 導入企業のIPO実績多数あり

    ラクローは、「効率的な勤怠管理」と「法令遵守」を両立したい企業に幅広く導入されています。

    導入検討段階から導入後のサポートまでメールやWEB会議などで専任のスタッフが伴走支援しています。

    まずはお気軽にご相談ください。