コロナ対策プロジェクト「Paddle」で模索するDeNAらしい働き方(株式会社ディー・エヌ・エー様)
SPECIAL INTERVIEW

コロナ対策プロジェクト「Paddle」で模索するDeNAらしい働き方[前編](株式会社ディー・エヌ・エー様)

常に「DeNAらしい働き方」を求め、アップデートしているDeNA様。コロナ禍では、「最適な働き方」を検討する新プロジェクト「Paddle」を立ち上げ。「DeNA独自の働き方の実現」と「社員の働きやすさ」の両立を模索する、人事の取り組みについてお聞きしました。

創業当初から変わらない企業理念を胸に、地域貢献を目指す

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最初に会社と事業の紹介をお願いします。
森様
DeNAと聞いて最初に想像される事業がゲーム事業や横浜DeNAベイスターズ等のスポーツ事業かなと思いますが、永久ベンチャーと言われているように、様々な事業にチャレンジをしています。会社全体のミッションの「一人ひとりに 想像を超えるDelightを」にもあるように「Delight」を届けたいという想いがあり、創業当時から変化していません。
大きく分けると、一人ひとりの人生を豊かにする「エンターテインメント領域」と、日々の生活を営む空間と時間をより快適にする「社会課題領域」の両軸の事業を展開するユニークな会社です。
エンターテインメント領域で言うと、ゲーム面ではモバゲーが「怪盗ロワイヤル」と共にブレイクしました。その他にもたくさんのヒット作品を出し続け、世の中に大きなDelightを与えられていると思っています。
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様々な事業をやっているなと思っていましたが、2つの軸があったのですね
森様
ゲーム以外でも、スポーツは横浜DeNAベイスターズ、川崎ブレイブサンダース、最近では元サッカー日本代表の稲本選手が在籍してるSC相模原にも出資をしています。
また、「Pococha(ポコチャ)」というライブストリーミング事業も展開しており、今かなり盛り上がっています。
社会課題領域ではヘルスケア事業が遺伝子検査サービス「MYCODE(マイコード)」や健康支援サービス等を展開しています。
また直近では新型コロナウィルスのワクチン職域接種の実施でも話題になったかと思います。
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スポーツに力を入れてらっしゃるんですか?
森様
スポーツと言うよりは、神奈川・横浜を中心に、DeNAとしても地域や社会を盛り上げていきたいという思いがあります。まさにスポーツ事業は、エンターテイメント領域と社会貢献領域の両軸がかけ合わさった事業とも言えますね
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地域貢献という面が強いんですね。
株式会社ディー・エヌ・エー  森様
株式会社ディー・エヌ・エー 森様
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お二人の自己紹介をお願いします。
森様
私は2011年に入社後2年間人事を担当し、その後前職の広告業務の経験を活かし、ゲームプラットフォーム事業部で広告業務をしました。さらに、事業に関わる予算や事業計画に携わる管理会計などを5年経験しました。そして身に付けた知識を活かすべく再度人事に戻り、現在はヒューマンリソース本部に在籍し勤怠や給与を中心に、最近では採用や人員管理、DeNAらしい新しい働き方の施策構築など幅広い分野を受け持っています。
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元々は広告事業をされていたんですね、DeNAさんにはなぜ人事で入られたんですか?
森様
以前勤務していた会社を退職する際に、社会保険周りの知識がなかったために、とある小さな事で厚生年金から外れ、国民年金に切り替わってしまった経験から、「人事労務の知識って大事だな」と調べ始め、キャリアコンサルタントの勉強を始めました。そしてその知識を活かせる職種として、人事を担当してみたいと考えていたところ、縁があってDeNAの人事を担当することになりました。
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なるほど。次に小林様の自己紹介をお願いします。
小林様
私は2009年に前職にエンジニアとして就職をし開発を担当後、希望により人事・採用部門に異動し、勤怠・給与やエンジニア採用などを経験しました。そして2020年2月DeNAに入社し、現在まで勤怠・給与を中心とした人事制度を専門にしています。
株式会社ディー・エヌ・エー  小林様
株式会社ディー・エヌ・エー 小林様
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元々前職でエンジニアとして入社後、人事を希望したとお話をされていましたが、きっかけなどはありますか?
小林様
エンジニアがたくさん在籍している企業において、エンジニアのバックボーンが強みになる仕事をできればと思い、人事や採用を希望しました。エンジニアという専門性の強い分野採用においては自身の経験が活かせると思ったからです。
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エンジニアが多い企業では、採用側もエンジニアを理解している事が必要ということですね。
小林様
まさに。DeNAもHR本部にエンジニア出身の方が多く、エンジニアのことを理解した上で人事業務に携わっています。

コロナ禍に対応した会社独自の働き方方針

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社員の皆さんの働き方について、以前から変化した所はありますか?
小林様
やはり一番大きいのはリモートワークを中心とした働き方になったことです。コロナ以前からリモートワーク制度の一部導入や裁量労働制やフレックスタイム制の労働時間制度の導入により、働く時間や働き方を社員の裁量に任せている部分はありましたが、あくまでも出社が前提となってました。が、現在はリモートワーク中心で働いています。
DeNAの方針としては、フルリモートではなく「出社とリモートワークを織り交ぜながら働く」という働き方を推奨しています。
ーー
出社とリモートワークを織り交ぜる働き方を推奨する理由は何でしょうか?
小林様
個人作業はリモートの方が生産性や効率が上がりますが、チームビルディングやオンボーディングの面を考えると、対面での仕事は一定割合必要ではないかという結論になり、2つを織り交ぜた働き方を推奨しています。
インタビュー風景
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なるほど。カルチャー的に長時間労働というイメージがありましたがその点は現在いかがでしょうか?
小林様
永久ベンチャーというイメージをもたれているとそうかもしれません。しかし現在は働き方を意識するための推進活動をしており、それが根付いたこともあり長時間労働というカルチャーはありません。具体的な活動として2017年にオフィスへの入退場ゲートのログでアラートを表示するようにしました。以前までは入退場ゲートを通ることで自然と勤怠が記録される仕組みはありましたがそれに加え、残りどのくらいの時間で36協定に到達する、などのアラートを表示することで意識改革を図りました。ただコロナによりリモートワークが主流となった2020年から、そもそも出社しないため、ゲートログでの勤怠収集が困難になり、正しい勤怠状況を把握することが難しくなりました。
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現状の働き方についてですが、基本はリモートワークの中で出社日はどのように決められていますか?
小林様
会社全体でルールを決めていません。各部門によって働きやすいように決めてもらっています。先程会社の方針として、出社とリモートワークを織り交ぜながら働くというというお話をしましたが、まだコロナ禍でもあるので部門によってはほぼ出社していない部署もあります。

人事と総務がコロナ禍に起こす化学変化 「Paddle(パドル)」

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その他にもコロナ禍で取り組まれたことは何かありますか?
森様
緊急事態宣言があったあの日を境に、働く場所がリモートワーク中心になり、「そもそも何を決めないといけないのか、誰が動かないといけないのか」から入りました。
人事本部長を中心として人事と総務、それ以外にも関わる様々なメンバーが一つになり、コロナ禍における最適な働き方を検討するプロジェクトを立ち上げました。それが「Paddle(パドル)」です。プロジェクト名の由来はMr.Childrenさんの「Paddle」から来ていて、「今まで別々で動いていたメンバーが1つになって、化学変化を起こしながら、コロナやリモートワークという大きな波がきても、怯んでないでむしろ乗っかって進んでいこうぜ」という、皆で船を漕いでいくというイメージがあります。私がMr.Childrenのファンというのもありますが笑。
インタビュー風景
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「Paddle」ではどのような取り組みをしたのでしょうか?
森様
「出社とリモートを組み合わせた働き方」などの方針決め、現状に合った人事規程の改定、勤怠管理システムの導入、今後の働き方にマッチしたオフィスのあり方など、さまざまな面での改革を行なっています。私達「Paddle」と「コロナ対策チーム」が合同して行なったコロナ対応が評価され、今年「Paddle」は社長賞を受賞することが出来ました。
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すごいですね!社長賞とはどの様な賞ですか?
森様
社長賞は年一回表彰される、会社の中で最も大きな賞です。活躍や貢献、成果を出した個人、チーム、プロジェクトなどに与えられるものです。事業もたくさんあるので複数の受賞があります。どうしてもバックオフィスサイドの動きは表には見えない部分も多いので、なかなかしんどい時もあるんですよね。そういう意味でも、受賞できたということはコーポレート全体でもとても嬉しい出来事だったのかなと思います。ちゃんとそのようなバックオフィスサイドの取り組みも見逃さない会社に感謝です。
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なるほど、「Paddle」の具体的な活動について聞いていきたいのですが、お二人の所属されている人事では、どのような活動をされていますか?
小林様
人事では制度改革に始まり、勤怠管理システムの選定・導入・運用や半年に一度働き方についてのアンケートを社内で取得しています。そこから現在の出社の状況、課題や要望を明らかにし、「Paddle」の活動方針を決めています。例えば、リモートワークを導入した初期のアンケートでは、自宅の執務環境についての声が多く上がっていました。そこでオフィスにある快適な椅子をクリーニングに出して希望社員の自宅に郵送する事で、社員の自宅環境の向上を支援しました。そのほかにも通勤手当の制度変更、リモートワークに関する手当の支給など社員のリアルな声を大切にし、働きやすい環境を整えるべく活動をしてきました。
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通勤費はどのようにされたのですか?また、手当というのは在宅勤務手当のようなものでしょうか?
森様
今までは定期券代を通勤費としていましたが、先程お話ししたように部署ごとに出社率が異なるため、定期券では公平性に欠けてしまいます。その為通勤費は実際の出社日にあわせた支給と変更しました。また健康増進やリモートワークのための手当を新たに作り、社員一人一人の新しい働き方に合わせて自由に使えるようにしました。
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なるほど。それらの制度を整えていったのですね。全ての社員が納得する制度を作るのは大変ですよね。
インタビュー風景
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現在もアンケートは取得していますか?
小林様
ちょうど3回目のアンケートを実施しているところです。今回は今までと少しアンケートの聞き方を変更して、前回のアンケート結果を共有すると共に、リモートワークになり1年経ってどのように考えているかというような質問をしました。1年前の社員の回答は、オンボーディングやコミュニケーションが取れないということが問題としてトップに来ていましたが、3回目のアンケートでは問題視する声が少なくなってきている傾向があります。その代わり今はリモート疲れや、健康・メンタル、フィジカルという方面の問題の声が上がっています。リモートワークに関しても、賛成派と反対派両方が存在するので、一概にどちらかを強制するわけにもいきません。
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「Paddle」の総務グループはどのような活動をしていますか?
小林様
今後のリモートワークを織り交ぜた働き方でのオフィスのあり方について話を進めています。オフィスのWeWork渋谷スクランブルスクエアおよび横浜への移転を決定しました。拠点を横浜に置くことで、神奈川を盛り上げていくというメッセージングにもなっています。
オフィス移転にはフリーアドレスの導入も含め、新しい働き方を積極的に取り入れたオフィスを作っています。
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新しいオフィスも横浜にできるんですね、新しいオフィスはフリーアドレス以外にもなにか工夫などあったりしますか?
小林様
ワクワクが生まれるようなオフィスを目指しており現在準備中です。

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