完全テレワークの中でもIPOを目指して客観的記録と打刻の突合を実現(株式会社ヌーラボ様の事例)
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株式会社ヌーラボ
従業員数:約140名(2022年4月30日現在、グループ全体)
事業概要:「このチームで一緒に仕事ができてよかった」を世界中に生み出していくことをブランドメッセージに掲げ、プロジェクト管理ツールの「Backlog」、オンライン作図ツールの「Cacoo」、ビジネスチャットツールの「Typetalk」、ヌーラボ製品のセキュリティとガバナンスを強化する「Nulab Pass」などを開発・提供している。
2022年6月にIPOを果たした株式会社ヌーラボ様。完全テレワークの中でIPOを目指し客観的記録の取得のためにラクローを導入していただきました。現在は他社勤怠管理ツールで打刻をしながら、ラクローでは客観的記録を取得し打刻と客観的記録の乖離がないかをチェックされています。今回は取締役管理部長の赤津様と人事労務課長の新谷様に同社のミッション、ラクロー導入・運用方法や上場などについてインタビューしました。
ー高山:御社の事業とミッションを教えてください。
赤津様:当社は「このチームで一緒に仕事できてよかったを世界中に生み出していく」というブランドメッセージのもと、「To make creating simple and enjoyable. 創造を易しく楽しくする」というミッションを掲げています。事業内容は主力商品のBacklogを始め、Cacoo、Typetalk、Nulab PassといったSaaS型のコラボレーションツールをサブスクリプションで提供している会社です。本社は福岡で、日本国内の拠点は東京と京都、その他に海外に3社の子会社があります。
ー高山:すべてのプロダクトのベースとなっている部分は、「チームでの仕事に必要なツールを提供していく」ということでしょうか?
赤津様:そうですね。ヌーラボでは、みんなで仕事をするのをいかに楽しく・気持ちよくするか、ということを考えながら様々な開発に取り組んでいます。
当社の主力プロダクトであるプロジェクト管理ツールのBacklogは、プロジェクト管理に必要な機能を一通り揃えた上で、幅広い業種・業界の方に使っていただけるユーザーフレンドリーなインターフェースや操作性にこだわっています。チームで仕事を進めていく上で責任の所在が明確になったり、フェアな情報アクセスが実現できるというような特徴があります。
ー高山:御社の従業員のみなさまの働き方を教えてください。
新谷様:従業員の働き方については変遷があり、2016年にコアタイムありのフレックス制度を導入することから始まりました。2018年10月にコアタイムなしのフレックス制度(深夜帯を除く)に移行し、2019年の2月に週1回のテレワーク制度を試験的に始めました。
2020年2月からはコロナ禍に対応するため一時的なテレワーク制度を導入したのですが、同年4月には完全テレワーク制度を導入し、多様な働き方に対応できるよう在宅と出社を自由に選択できるようにしました。
その後、8月に勤務地条件を廃止して、日本国内であればどこでも働けるようにしました。
ー高山:なるほど。コロナ禍を機にはじまった完全テレワーク制度ですが、今も在宅勤務の割合はほぼ100%に近いですか?
新谷様:そうですね、ほぼ100%ですが、毎日出社する方も数名いますね。
ー高山:自由に勤務場所を選択できることはすごく良いなと思います。
新谷様:完全テレワーク制度を導入するにあたって、従業員に意見を求めた時、賛成の声が多い中「やっぱり会社じゃないと集中しづらい」や、「少しずつ慣れていきたい」といった声もあったので、自宅か会社か日々働く場所を自由に選択できた方が良いのではないかということでこの働き方になりました。
ー高山:テレワークをきっかけにできた人事制度などはありますか?
新谷様:人事制度ではありませんが、テレワーク下では人との会話が減りがちなので、雑談の機会を設けたり、上長との1on1の他に、部署に関係なく話せる場として「Small Talk」、新入社員のオンボーディングに他部署の従業員とも幅広く交流することで、置いてけぼりにならず早く馴染んでいただくことを目的として「すごろくTalk」を実施しています。
独自の管理方法で、打刻データと客観的記録の乖離をチェック
ー高山:ラクローの導入とテレワークの導入は同じタイミングでしょうか?
新谷様:そうですね。ラクロー導入開始が2020年8月なので、同じタイミングです。
ー高山:システム選定が始まった背景やきっかけはどういったところにありますか?
新谷様:「客観的な記録を元に労働時間を把握する」という目的がありました。上場審査の中で客観的記録による労働時間の把握への対応が必要になったことと、もう一方でテレワーク導入にあたり客観的な記録をどう取るかという課題が同じタイミングになったのもあって動き出すきっかけになりました。
ー高山:ラクロー導入以前は客観的な記録は取っていましたか?
新谷様:当時は自前の勤怠管理ツールを使っており、打刻の客観性を証明するその他の記録は取っていませんでした。
今は他社の勤怠管理ツールを使っており、その勤怠の整合性を担保するものとしてラクローのPCログを活用しながら運用しています。
ー高山:なるほど、月末に他社の勤怠管理ツールの打刻データをラクロー上にCSV取込で持ってきて、確認をするという運用になったのですね。
新谷様:他社勤怠管理ツールに記録されている打刻データとラクローで記録されたPCログの抽出を自動化し、Googleスプレッドシートに集約・管理しています。この二つのデータに差分が発生した日について、従業員自身が理由を書きこみ、上長はスプレッドシート上で日々の打刻時間、PCログ、差分理由を確認できるようになっています。また勤怠の打刻漏れや差分理由の入力もれを防ぐために、差分が生じた場合には、弊社のTypetalkに一人ずつダイレクトメッセージで通知が来る仕組みも作っています。
ー高山:そこまで仕組み化されてるんですね!?この運用が完成するまでどのくらいの期間をかけられましたか?
新谷様:まず2020年5〜7月を運用方法を検討する期間とし、ラクローのサポートの山崎さんにも毎日のように相談させていただきました。検討の際には、なるべく工数をかけずにPCログに管理されている感覚がない方法を目指し、当社のインハウスシステム課と相談しながら3ヶ月くらいかけて作り込み、8月には運用できる状態になりました。
ラクロートライアル中に従業員と密にコミュニケーション
ー高山:ラクロー導入のタイミングで社員の皆様とどういったコミュニケーションを取られていましたか?
新谷様:導入の際、何度か従業員に意見を求める機会を設けました。
「使ってみてどうですか」や「こういうふうに改善してほしいとかありますか」など、意見を幅広く募集して課題を整理し、システム化できることと運用でカバーできることに分けて一つひとつ対応していきました。導入に向けてコミュニケーションを取っていくことで従業員の理解や協力が得られ、導入から運用までスムーズだったと思っています。
ー高山:全社的に運用を開始したのはいつ頃でしょうか?
新谷様:2020年8月のラクローの契約と同時に、全従業員のセットアップを行いました。また同時に差分チェックとTypetalkの通知のテストを始めましたが、問題がなかったため9月から本稼働となりました。
ー高山:本稼働後に入社された方にはどのように説明をしているのでしょうか?
新谷様:弊社のBacklogにWikiの機能があって、そこで勤怠管理をマニュアル化しています。ラクローのインストール方法も含めて、いつでも見ることができる状態にしています。
上場に向けた体制を構築
ー高山:上場の話もお伺いできればと思うのですが、上場にあたって証券会社から指摘されたことはありますか?
赤津様:主幹事証券から上場指導を受けるタイミングで、フルリモートワークでの勤怠管理のログ取得の方法を聞かれました。タイミングとしては丁度ラクローの導入を検討している時期だったため、導入計画を丁寧に説明しました。
上場審査は、ラクローのPCログがしっかり残っていたことと、他社勤怠管理ツールで勤怠申請がクリアになっていたこともあり、大きな指摘を受けることなくスムーズに進んだ印象です。
新谷様:テレワークならではの課題というところで従業員の労働環境の確認です。
対応としてはガイドラインを作成して、定期的に作業環境調査を行なっています。
ー高山:どのくらいの頻度でやられているのでしょうか。
新谷様:基本的には年一回ですが、新入社員は入社したタイミング、従業員の転居時は転居届が提出された月に実施をしています。
担当者が自宅に行って作業環境を直接確認することができないため、具体的には、各従業員が作業環境や健康状態、セキュリティ関連の質問に回答し最後に作業環境を撮影・画像を添付して提出します。担当者はこれらの報告をもとに、必要に応じて声掛けをするようにしています。
一人ひとりに寄り添って働きやすい環境を
ー高山:今後、人事労務面で力を注ぎたいことを教えてください。
新谷様:人事労務面での取り組みはいくつかあるのですが、外国籍の社員が一時的に実家に帰省した時でも働くことができる、海外でのテレワーク制度を考えています。
また、勤怠締めや申請の催促など人から言われて嫌な気持ちになることはなるべくTypetalkのBotを使うなどして、システム化できるところはシステムに任せています。個人的には人事としてうまくシステムを導入することで業務効率化を図り、従業員一人ひとりにもっと寄り添える時間を作っていきたいと考えています。
赤津様:経営陣の思いとしては、例えば実際に出社していた時に感じていた「一緒に働いている感覚」をなんとかオンラインという環境下でもリアルなものにしたいなと日々模索しています。リモートワークという環境でも、「チーム」を感じることができる、リアルに一緒に働いている様な感覚で働けるような会社を作っていきたいです。
「働きやすさ」を世界に広げる
ー高山:今後のサービス面での展望を教えてください。
赤津様:ビジネス面ではBacklogユーザーの裾野を広げ、既にDX化されている企業様や、これからDX化に向けて取り組まれる企業様など業種・業界問わず、より働きやすい環境で業務を効率化していただきたいと思います。
プロジェクト管理ツール業界という業界があるとすれば、この業界が目指すべき未来はそこで、世界に働きやすさを広げていく、コラボレイディブな働き方を広げていくということが大事なんだと考えています。
ー高山:社内外問わず、「働きやすさ」にフォーカスした企業様という印象を受けました。ありがとうございました。