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【社労士監修】従業員の事故や疾病で活用できる傷病手当金とは?

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2020-07-15

従業員が突然のケガや入院などで会社を休む場合に必要な手続きは?

健康保険の制度には「限度額適用認定証」があります。医療機関や調剤薬局および訪問看護事業所で高額な医療費が支払い時における窓口負担を軽減させる制度です。また、私傷病による休みによって給与が支払われない(又は減額される)ときの所得保障として「傷病手当金」の制度があります。

従業員の突然の事故や疾病によって、会社に出勤できなくなることは決して珍しいことではありません。従業員が私傷病により休みが必要なときに安心して療養することができるように従業員に対して会社側がどのようなサポートができるのか、今回は健康保険の給付について確認していきたいと思います。

限度額適用認定証とは?

限度額適用認定申請証を健康保険者証と一緒に医療機関へ提示することで、窓口で支払う自己負担額を自己負担限度額まで軽減してくれる制度です。

一般的に医療機関での窓口負担は、自己負担額3割を支払います。長期入院等により高額な医療費が発生した場合は、必要に応じて申請を行うことで後日医療費の一部について給付を受けることができます。給付は窓口での支払いから平均で3か月以上経過してから実施されます。

一時的とはいえ高額な医療費を支払うことは大きな経済的負担になりますので限度額適用認定申請証を交付する手続きを行い、高額療養費分を健康保険から直接医療機関へ支払うことで、従業員の窓口負担を軽減することができます。

具体的には、健康保険の標準報酬月額(28万円から50万円)の者で、1か月の自己負担限度額が8万円ほどになります。

現定額認定証の交付手続きは、加入する健康保険のHPから申請書類を取得し直接又は事業主経由にて書類を提出します。およそ1週間ほどで手元に届きますので、入院先の病院へ支払い時までに提示してください。

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健康保険から所得保障として支給される傷病手当金とは?

傷病手当金とは、業務上や通勤災害以外の病気や負傷によって、本来の業務に就くことができない間、報酬が減額された分について健康保険から所得保障として保険給付がされる制度です。健康保険に加入していれば、正社員だけでなくアルバイトやパートの方も受けることができます。

給付条件

  1. 療養中のためであること
  2. 労務に服することができないこと
  3. 労務不能となった日から連続して3日間の待期があること

1の療養中とは、医療機関にかかった日だけでなく自宅療養をした日も含みます。また伝染病の病原菌保菌者が隔離収容された場合も含みます。美容整形や健康診断などで休んだ日は含みません。

2の労務に服することができないことは、本来の業務に耐えることができないことを示しているので、副業や内職など本来の業務の代替的性格をもたない労務に服せる場合は対象となります。

3は原則勤務に服せなくなった日から3日間の待期が必要で、期間中に休日や祭日が含まれていても完成します。

支給期間

支給を始めた日から起算して1年6か月を超えない範囲で支給されます。支給期間中に傷病が治ゆ、または治ゆしないが労働能力が回復したときは、傷病手当金の打ち切りがあります。

支給額の計算方法

以下の計算式で1日あたりの支給額を算出します。

傷病手当金の支給を始める月以前の直近の継続した12ヶ月間の標準報酬月額を平均した額 ✕ 30分の1(10円未満四捨五入) ✕ 3分の2(1円未満四捨五入)

次に対象日数を掛けて歴月単位の傷病手当金の額を算出します。

1日あたりの傷病手当金の額 ✕ 対象日数(請求期間の土日を除く日数)

例)令和2年3月に支給事由が発生した場合

3月2日から長期入院により労務不能となり、連続して3日間(2日〜4日)の待期期間を満たした上で3月5日から3月末まで欠勤し、直近の継続した12か月の標準報酬は以下とする

  • 令和元年4月〜8月(5か月間)   標準報酬 20万円
  • 令和元年9月〜翌年3月(7か月間) 標準報酬 22万円

計算例:
(20万円 ✕ 5か月 + 22万円 ✕ 7か月) ÷ 12 ✕ (1/30)= 7060(10円未満四捨五入)
7060 ✕ 2/3 = 4707(1円未満四捨五入)
→1日あたりの支給額 4,707円

4,707円 ✕ 19日間(3月5日から31日の19日間)= 89,433円
→歴月単位の傷病手当金の額 89,433円

直近の継続した標準報酬が12か月に満たない場合の計算方法

入社後1年に満たない場合等で標準報酬月額が12か月に満たない場合には、次の計算のうち、①②いずれか少ない額の3分の2に相当する額になります。

①傷病手当金の支給を始める日に属する月以前の直近の継続した各月の標準報酬月額を平均した額 ✕ 30分の1(10円未満四捨五入)
②傷病手当金の支給を始める日の属する年度の前年度の9月30日における全被保険者の同月の標準報酬月額を平均した額を標準月額の基礎となる報酬月額とみなしたときの標準報酬月額 ✕ 30分の1(10円未満四捨五入)

例①)令和元年9月入社で資格取得、3月支給開始

  • 令和元年9月〜11月(3か月間)       標準報酬月額 22万円
  • 令和元年12月改定されて翌年3月(4か月間) 標準報酬月額 26万円

計算例:
(22万円 ✕ 3か月 + 26万円 ✕ 4か月)÷ 7か月 ✕ 30分の1 = 8100(10円未満四捨五入)

例②)平均した標準報酬額を30万円で試算した場合

計算例:
30万円 ✕ 30分の1 = 10000

例①と例②を比較

①は8,100円、②は10,000円ですので、少ない方の8,100円に3分の2を乗じます。
8100 ✕ 3分の2 = 5400
1日あたりの傷病金の額 5,400円

報酬額との調整

傷病手当金は、働くことができず収入が減少したときの所得保障ですので、仕事を休んでいる間にも会社から給与や休業手当など報酬の全部または一部が受けることができる者に対しては、支給されません。

例外として、その受ける報酬額が傷病手当金より少ない場合は、その差額が支給されます。また、同一の事由による疾病で障害厚生年金の支給をうけることができる場合にも調整が行われます。

傷病手当金の額(傷病手当金の日額 ✕ 対象日数)− 支給期間中に会社から支給された報酬額 = 報酬調整後の支給額(歴月単位)

私傷病により休む従業員は、医療費負担だけでなく所得面においても不安を抱えるになります。健康保険から受けることができる必要な制度について基本的に本人からの申請をもとに事業主経由になりますが、従業員が知らないことも多いのが現状です。事業主として「限度額適用認定申請書」や「傷病手当金」についての知識や健康保険への申請手続きを理解して制度を利用していくのが望ましいでしょう。

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