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【社労士執筆】従業員から「ログを取らないでほしい」と言われました。どうすればいいですか?

  • 労務知識
  • 客観的記録
2023-04-21

執筆者
寺島戦略社会保険労務士事務所 所長
寺島 有紀

    従業員から「ログを取らないでほしい」と言われました。どうすればいいですか?

    上場準備に入ると、これまで様々な点に関しざっくりとした管理体制であったものをより厳格に管理をするといったことが多く生じます。労務管理だけでなく、経理関連や稟議体制、販売管理、文書管理等、様々な点でも管理体制の強化は図られているはずです。

    弊社でも労務顧問として上場準備企業に関わる中で、従業員側から「今までのやり方がよかった・・・」「もっとラフにやりたい」「そんなに管理されたくない」こういった声があり、どうしたらいいのかと迷う労務担当者の声は多く聞いてきました。

    経営側としても「もっと柔軟にやらないとうちらしさ、うちの社風が失われる」といった思いもあることだと考えます。

    せっかくスタートアップ・ベンチャー企業で、「自由な社風のもと柔軟に進めてきていたのに・・・なんだか窮屈」というのは上場準備企業において従業員としても経営としても多かれ少なかれあると思います。必ずぶつかる壁といってもいいと思います。

    ただ、一方でやはり「上場企業にふさわしい体制とは」というところを考えたとき、これまでのやり方を変えざるを得ないというところは絶対に発生します。

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    PCログ取得は義務?

    PCログの取得に関しては、法的な義務とまではならないものの、勤怠管理の客観性を高めるという点で、上場準備の一環で証券会社等に強く要請されるケースは多く、最終的には経営の決定によるところではあるものの、PCログと勤怠記録の突き合わせを始める企業は多い印象です。

    なぜ客観的な勤怠把握が必要なのかという点については、従業員に対しなにか悪い意味での監視を行う、といった目的ではなく、コンプライアンスを守るという点が重要となっておりやはり従業員にもこの目的を真摯に説明し、納得をいただくほかありません。

    ・企業としての安全配慮義務を果たす
    ・労働基準法に基づいて、適切に賃金を払う
    ・36協定も遵守する


    なぜログ管理をして欲しくないの?

    なぜログ管理をしてほしくないのか?という点において、

    「これまで会社には言っていなかったが家庭の事情で昼間に中抜けし内緒で許可なく深夜に稼働していた」

    のような事情が発覚することは多いです。

    ただ、ログ管理をすることと、これまで通りこの方に深夜に稼働を認めるか?という点は別論点であり、会社として、この方が深夜に稼働している事情が発覚した場合に、深夜の割増賃金といったコスト面や安全配慮を鑑みつつ、許可する基準を協議して決め、個別の柔軟な働き方に歩み寄ることは会社判断にはなるもののできる余地はあります。

    そもそもの業務配分等の根本部分を変える必要もあるかもしれません。
    会社としては、骨が折れるかもしれませんが、一つ一つのやり方を変えるうえでこうした納得度を高めるコミュニケーションは必要になるケースが多いです。

    あらかじめ、従業員説明会等を通じて、誤解を生まないよう会社としての目的や方針を伝えるということが重要かと思います。


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    寺島 有紀

    ・寺島戦略社会保険労務士事務所 所長

    ・一橋大学商学部 卒業

    新卒で楽天株式会社に入社後、社内規程策定、国内・海外子会社等へのローカライズ・適用などの内部統制業務や社内コンプライアンス教育等に従事。

    在職中に社会保険労務士国家試験に合格後、社会保険労務士事務所に勤務し、ベンチャー・中小企業から一部上場企業まで国内労働法改正対応や海外進出企業の労務アドバイザリー等に従事。

    また、保険会社主催のセミナーや人事業界紙での執筆等にも携わる。

    現在は、社会保険労務士としてベンチャー企業のIPO労務コンプライアンス対応から企業の海外進出労務体制構築等、国内・海外両面から幅広く人事労務コンサルティングを行っている。

    その他保有資格:TOEIC920

    HP:https://www.terashima-sr.com/